〜ドサクサの中国市場:勝者はだれか?〜
<第3のドサクサ>
  数年前から武漢の街中に、繊維製品を中心にした一大卸売市場が出現している。そこには数棟の雑居ビルの中に、1〜2坪ほどの広さの店が約4千社集結している。それは戦後の日本の闇市に匹敵するドサクサ市場であり、また韓国の東大門市場の数倍規模の卸売り市場である。連日、大勢の買出し客でごったがえしており、大きな袋を担いだ人が右往左往し、大声を出さないと会話ができないぐらい騒がしい。地理に不案内の人間が紛れ込むと迷子になることは必定だし、大混雑の中で、スリに気をつけながら買い物をしなければならないほどである。商品は安いものでは10元から、高いものでも100元以内で売られており、品質も悪くはない。また衣服関連製品のすべてがそろっている。さらにほとんどが現金決済であり、客は商品をその場で大きな袋に詰め担いで帰る。増値税の発票などの現場はまったく見当たらない。ここの業者はほとんどがもぐり販売をしているようだ。この雑居ビル群のオーナーはほとんど温州商人だという。それだから法令無視もまかり通るのだろう。とにかく客は近くの駐車場まで大きな袋を担いで運び、そこで目的地別のトラックに乗せている。何十台ものトラックで道路が麻痺してしまっている。ビルの窓からその光景を見ると、無数の人間がうじゃうじゃと働き蟻のようにうごめいている。まさに、これが「世界の市場=中国」という感じである。
  このような卸売市場が、現在、中国各地に多数出現しているという。これが13億人の中国の真の市場なのである。そしてこれらのドサクサ市場は、武漢の卸売り市場のように、温州商人の類に牛耳られている。だから世界から参戦してくる外資は、最終的にはこれらの土着の商人と激突することになるだろう。外資はこの闇市場の主に果たして勝てるのだろうか。この数年で温州商人はドサクサ市場を足場に、確実に成長してきており、さらに肥大化し巨大企業に変身する可能性も持ち合わせてきた。外資にとっても、このドサクサ市場で勝たないかぎり、「13億人の中国市場」は虚構で終わるのではないか。百貨店などでごく少数の高所得者を対象にした商品の販売を狙うだけでは、緒戦は勝てても、最終的には淘汰され、駆逐されるのではないだろうか。

<第4のドサクサ>
  日本企業の多くは、「中国は世界の市場」の掛け声に踊らされて、これらのドサクサ市場の現実を見ないで、あたふたと進出してきている。どっこい中国市場はそんな簡単なものではない。商業分野での先発企業のカネボウ化粧品ですら、つい最近、店頭商品のいっせい引き上げを余儀なくされたように、それは複雑怪奇である。もちろん従来から指摘されている代金回収や知的所有権の問題などは未解決
のままであるし、商標権の問題も意外に煩雑である。バックマージンの慣行に習熟するのにも、かなりの時間がかかるだろう。中国市場は進出してすぐに儲かるような容易なものではない。
  私は今から3年前、すでに「中国は世界の市場」を予測して、日本企業に中国市場への進出を呼びかけた。それらの企業の販売拠点兼常設展示場として、上海の世界貿易商城(通称:上海マート)内に100ブースを借りきり、上海日本服装商城としてオープンさせた。そこで日本の進出企業が頭を寄せ合い、中国市場への販売を実践練習しておけば、来るべき商業開放のときに、その流れに一気に乗って、大飛躍ができると考えたからである。日本企業が100社ほど固まり、そこに日本商店街を作れば、上海名物になることは間違いなしであり、共同で顧問弁護士や会計士も雇用できるし、なによりも団体の圧力で政府機関との交渉が有利に展開できると考えたからでもある。私は上海日本服装商城へ日本企業を勧誘するために、大規模なファッションショーや展示会、モデルオーディション、定期的な講演会などを積極的に行ない、マスコミをはじめとして多いに宣伝活動を行なった。また私自身が多くの企業に勧誘に歩いた。しかしながら、私の熱意は多くの人に伝わらなかったばかりか、鼻であしらわれることが多かった。結果として15社ほどの出店があったが、100社には遠く及ばず、見事に私の上海日本服装商城構想は頓挫した。
  しかしながら、3年後、私の読みどおり、波が来た。上海マートへの日本企業入居者も増えてきており、すでに30社に及んでおり、年内には50社を超えるだろう。そのような中で先発の15社は、この3年間ですでに中国市場に対して、いろいろなチャレンジを繰り返し、温州商人にも勝てるノウハウを蓄積してきた。それらは企業秘密なので、ここでは紹介はできないが、大きな成果を勝ち取っている企業もある。このドサクサ市場に勝つには、泥縄では勝てない。3年前から地道に研究してきた企業のみが、大きく飛躍できるのである。ドサクサと駆け込んできただけでは、まず勝てない。

<さて、ドサクサの勝者は?>
  いずれにせよ、日本のみならず世界の著名大企業が中国市場になだれをうって出てきている。まさにかつての米国のゴールドラッシュさながらである。しかしながらあのゴールドラッシュのとき、実際に金を掘り当てた人間は皆無に近く、結局、大儲けしたのはツルハシ屋と弁当屋だけだったという。われわれ中小企業家は、むしろツルハシ屋や弁当屋の役割を狙った方が、おもしろいかもしれない。

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