中国各地の工場レンタル料は、激安である。それは添付の資料でも一目瞭然だが、おおかた1u当り、月間3元(40円)から15元(200円)の範囲内である(特殊物件を除く)。つまり1000uの工場を借りた場合、そのレンタル料が月間4万円から20万円で、平均値で10万円程度なのである。現在、上海市内の新築マンション(2LDK)を借りた場合、月間家賃はおおむね10万円である。これと1000uの工場レンタル料が同額なのである。これを激安価格と言わずして、なんと呼べばよいのか。
<第1の理由>
まず土地や建設コストが安いからである。土地はもともと国有であり、いわばただ同然である。地方政府は、これを工業用地として、1ムー(約667u)=10万元から50万元で売りだしている(正確には30年ほどの期限付き土地使用権の売却)。つまり高くても1u=1万円前後である。土地代の工場建設総額に占める割合は低い。工場建設費用は、標準的工場で1u=800元から1500元である。したがって最高額でも1000u=2000万円ほどであり、20年償却としても月間約85000円ほどに収まる。たしかに土地代+建設費で、10万円内にはおさまる。しかしこれには貸主の利益は含まれていないし、10万円のものをわざわざ5万円で貸すような、出血激安レンタル工場が乱立していることの説明にはならない。
<第2の理由>
地方政府はただ同然の土地を売って、インフラ整備や社会福祉のための必要資金を捻出しようとした。しかしこの土地を買ったのは、その土地でまじめに工場を操業しようと考えている人だけではなかった。その土地を転売して儲けようとたくらんでいる人も多かった。政府はそれを防止するために、売却条件の中に「2年以内の工業用地としての開発」を義務付け、それに違反した場合は没収とした。したがって購入した側は、とりあえず2年以内に、そこに工場を立て、操業しているように見せかける必要に迫られた。ところが彼らは不動産業者ではあっても、製造を本業とする企業家ではなかったので、建てた工場を他の製造関連企業家に貸し出し、実際に操業してもらうことにした。ここに中国全土で、新築レンタル標準工場が激増した背景がある。家賃は激安でもよいので、とにかく他人に貸して操業を開始することが、没収を逃れる方法なのである。これが華僑の巨大資本や温州
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商人などの国内新興財閥の土地転がし新戦略なのである。彼らは数年先の土地の大幅値上がりと、政府が土地転売を許可するのを見越し、出血覚悟で工場を賃貸し、じっと待っているのである。
<第3の理由>
さらに最近では、この工場レンタル市場に新手が加わった。レンタル料が激安なのは、むしろこの影響が大きい。最近、地方政府は国有公司など借金漬けの工場を、一度倒産させ、人員を整理し、その後、工場をリフォームして、激安価格で貸し出すビジネスを始めた。衆知のように、現在、中国では国有公司をはじめとして倒産寸前の企業がきわめて多い。政府と銀行は、これらの不良債権処理に躍起となっており、その一つの有効な手段として、この方法が考え出されたのである。
しかもこれらの物件の整理やオークションを行なう専門会社さえ出現している。そのような会社は「拍売有限公司」と呼ばれ、すでに全国に数百社存在している。この会社は「拍売士」という国家認定資格を持つ社員を2名有せねばならず、取引の双方から5%づつの成功報酬を得るというシステムになっている。この中国版産業再生機構のような会社の出現によって、今まで塩漬けになっていた建物などが、新品同様になって市場に投入されてきているのである。今後、この手法で、中国全土に激安工場が続出するであろうし、その結果、当然、工場レンタル料の激安状態も続くであろう。
この激安:工場レンタル料の状況は、中国進出を考えている日本の中小企業にとっては、非常に有利である。なぜなら激変する中国では、多額の資本を一定の場所に投下するのはリスクが大きく、レンタル工場ならば少額の資本で開業が可能であり、リスク回避には最適だからである。中国ではいつ電力不足や水不足というような事態に巻き込まれるかもしれないし、地元政府からの突然の立ち退き要請もありうる。またすぐ近くに強力なライバル会社が、突然出現するということもありうる。人手不足もひたひたと進行してきている。だから中小企業は、中国では、自前の工場を建設するより、この激安なレンタル工場を利用して、資本投下を少なくしておくことが、絶対に有利である。不利な条件が出てきた場合、即刻、他の場所に移動すればよいからである。もちろん最少の損失で、撤退することも可能である。
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