先日、私の上海の公司の運転手が朝8時ごろ、突然、「今日は休ませて欲しい」と電話をかけてきた。彼は勤勉な人で、今までにあまりこのようなことがなかったので、家族が急病にでもなったかと思い、私はその理由を聞いてみた。すると彼は「今日10時から、銀行で五輪記念紙幣が売り出されるので、これから銀行の前で並びます」と答えた。彼の友人の父親が銀行の役員らしく、彼はそのルートから発売場所や時刻などの情報を得たという。その日、休暇を取った彼は予定通り、妻と娘の3人で銀行の前に並んだ。そして各自1枚ずつの記念10元紙幣を手に入れた。3日後、彼はその3枚の紙幣を合計2850元で売却したという。この金額は彼の1か月分の給与に相当する。
7月中旬、中国各地で北京五輪記念紙幣が発行された。記念10元紙幣の市中相場は、数時間後に300~400元となり、数日後には1000元となった。
銀行関係者は次のように語っている。7/09から全国各地の工商銀行・農業銀行・建設銀行・交通銀行の5行を通じて、北京五輪の10元記念紙幣がいっせいに発行され、午前中に完売した。売り出しの現場を取材したマスコミ関係者の感想では、記念紙幣を購入している人たちは3種類に大別できる。第1種類は五輪を応援するのが目的で買っている人たち、第2種類はマニアの人たち、第3種類はこれで一儲けを企んでいる人たちであり、圧倒的に第3種類が多い。
ネットでは、下記のような情報が氾濫している。
- 7/11 浙江新聞ネット:五輪記念10元紙幣は、あっという間に400元へ。
- 7/11 中広ネット:五輪記念10元紙幣の銀川市場での価値は600元。
- 7/13 中国新聞ネット:上海や北京の貨幣市場では、五輪記念10元紙幣が950元になった。
- 7/13 人民ネット:天津では五輪記念10元紙幣が1000元になった。これはすでに市場価値の範囲を大きく逸脱し、危険水域に入った。マニアは冷静になるべきだ。
- 7/16 新浪ネット:太原では1100元になった。なお安徽テレビでは、続き番号の10元紙幣は、10000元で取引されている。
- 7/18 浙江日報:上海では1180元になった。この値段は馬鹿げているのではないか。
さすがにこの狂騰には中国人も驚き、マスコミも警告を発しているようだが、その後の情報によればマニアの中では、すでに2000元以上の相場になっているという。現状の中国では、金融引き締めにもかかわらず、市中には金余り現象が起きており、マンションの値下がりと株の下落のため、行き場を失ったカネが、一時的にこの五輪記念紙幣へとなだれ込んだのではないかと思われる。
いずれにせよこの現象は、バブル景気末期の現象と中国人の射幸好きの精神が、重なって表れたものである。ブームが過ぎたとき、いかに記念紙幣であっても、現実には10元にしか通用しないことがわかる。記念金貨ならばまだ金としての価値はあるが、それは紙幣であるだけに、庶民は大きく落胆することになるだろう。
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